「戦争と平和」をレビュー!あらすじや登場人物、おすすめの翻訳など

トルストイ戦争と平和


長年、読みたいなと思っていたトルストイの小説、「戦争と平和」をついに読破しました!

「戦争と平和」は長編大作なので、途中で挫折しそうな気がして、ずっと手が出せませんでした。

ただ、大げさかもしれませんが、死ぬまでには読んでおきたいと一念発起し、約1ヶ月ほどかかって読み終えました。

そこで、僕なりに「戦争と平和」のレビューをしてみることにしました。

「戦争と平和」の簡単なあらすじや主な登場人物、時代背景、さらにはおすすめの訳など、「戦争と平和」に関する情報をまとめています。

これから「戦争と平和」を読んでみたいと思っている方は、参考にしてみてくださいね!

「戦争と平和」は全部で4巻あり、量もさることながら内容も読み応えがありましたよ♪

「戦争と平和」は、どんな本?

戦争と平和の作者

「戦争と平和」の作者は、レフ・トルストイ(1828-1910)。ロシアを代表する文豪です。

代表作には、「戦争と平和」以外に「アンナ・カレーニナ」や「復活」があります。

かなり有名なので、読んだことがなくても作品名やトルストイの名前は、聞いたことがある方は多いんじゃないでしょうか。

ちなみに、戦争と平和は、トルストイが、1863~1869年の6年間かけて執筆したと言われています。

「戦争と平和」が描かれた時代背景

戦争と平和

「戦争と平和」に描かれている時代は、ナポレオンのロシア侵攻の時代です。

年代は、1805年から1812年までとエピローグで、そこから7年後のことが描かれています。

戦争と平和は、どんな内容?

「戦争と平和」は、ロシア侵攻の影響で変化していく当時のロシアの貴族社会と戦争という2つの軸で展開しており、軍や貴族など多数の人間が登場する群像小説です。

【「戦争と平和」の概要】

「戦争と平和」は、ナポレオンのロシア侵攻による戦争が引き金となり、貴族であるベズーホフ家、ロストフ家、クラーギン家、ボルコンスキイ家の人間たちの成長や変化などが描かれています。

戦争と平和の主な登場人物

戦争と平和

戦争と平和の登場人物の総数は、559人!

ものすごい数ですよね。

トルストイの人物描写は、主要な登場人物はもちろんのこと、ちょこっとしか登場しない人間も風貌や衣服など細かく描かれており、非常に印象に残ります。

主要な登場人物

ベズーホフ家

ピエール(ピョートル・キリーロヴィチ・ベズーホフ)

莫大な資産を持つ父(ピエールは庶子)の死により、遺産を相続。外見は眼鏡をかけ、太っていて、周囲から浮いた存在だったりします。

性格的には、純粋で周りに流されやすいタイプですが、徐々に《生きる真理》を見出し、変化していきます。

ボルコンスキー家

アンドレイ・ニコラーエヴィチ・ボルコンスキィ

ボルコンスキィ家の長男で青年士官。ピエールの親友。ナポレオンとの戦争に従軍。クトゥーゾフ将軍の副官などを務める。

マリヤ・ニコラーエヴナ・ボルコンスカヤ
アンドレイの妹。信心深い。父、フランス人の話し相手、マドモアゼル・ブリエンヌらと禿山の領地で暮らしている。

ロストフ家

イリヤ・ロストフ伯爵
ロストフ家の家長。貴族。富裕層だが、お人好しな性格のため、徐々に家庭を困窮させていく。

ニコライ・イリーイチ・ロストフ
ロストフ家長男。青年士官として戦場に赴く。戦争を通じ成長していく。

ナターシャ・ロストフ
ニコライの妹。美形で天真爛漫な少女だが、恋愛や戦争を通じ、立派な母に変わっていく。

ペーチャ(ピョートル・イリーイチ・ロストフ)
ニコライの末の弟。若くして戦場に赴き、1812年頃軍に仕官する。

ソーニャ
ニコライの又従兄妹。ロストフ家の居候。幼い頃からニコライを愛し、一旦は許嫁となる。

クラーギン家

アナトーリ・ワシーリエヴィチ・クラーギン
クラーギン家の次男。エレンの兄。美形のプレイボーイで放蕩、享楽的な生活を送る。

エレン・ワシーリエヴナ・クラーギナ
アナトーリの妹。当時の社交界の頂点に君臨する絶世の美女。兄と同じ享楽的。ピエールの妻となった後も、放蕩生活を続ける。

その他

ドーロホフ
アナトーリ、ピエールの友人。遊び仲間。戦争にたびたび参加。その気性が災いし、昇格と降格を繰り返す。ギャンブルと決闘が好き。

ボリス・ドルベツコイ
ニコライ兄妹の幼馴染。ドルベツコイ家の一人息子。母親の人脈で、近衛連隊に入る。出世欲、上昇志向が強い。観察力に優れ、世渡り上手。

ワシーリィ・ドミートリチ・デニーソフ
ロシア軍の士官。ニコライの戦友。人望がある。

歴史上の実在人物

ミハイル・イラリオーノヴィチ・クトゥーゾフ
ロシア軍の元帥。老練。経験豊富。周囲からの批判を浴びながらも、アウステルリッツの戦いやボロジノの戦いで結果を出す。

ナポレオン・ボナパルト
フランス皇帝。作中では優秀な人物として描かれている。アンドレイやピエールにも影響を与える。英雄であるがゆえの無力さが描かれている。

アレクサンドル1世
ナポレオンのロシア侵攻時の皇帝。

「戦争と平和」のあらすじ

ベズーホフ家では、老伯爵が死に庶子のピエールが莫大な財産を相続します。ピエールは、肥満体でお人好し、不器用な人間です。悪友とともに酔って騒動を起こしたりします。

ピエールは大富豪となり、金目的で近づく周囲の人間の対応に戸惑いながら、生きる意味を見いだせずにいます。

ボルコンスキイ家のニコライ老公爵は、かつて前皇帝の重臣だった人物です。息子のアンドレイはナポレオンへの憧れもあり、軍人となり、身重の妻を父の家に残し、出征。妹のマリヤは熱心なキリスト教徒で、父の監視のもと屋敷内に籠もった暮らしを送っています。

アンドレイは、クトゥーゾフ元帥の副官となり活躍。アウステルリッツの戦いで負傷しますが、フランス軍の捕虜にされます。同じくこの戦いには、ロストフ家のニコライも出征、腕を負傷します。

アンドレイは捕虜生活を終えて領地「禿山」へ戻りますが、妻は出産後死亡、愛息が遺されます。

アンドレイは、ロストフ家を訪れた際、ナターシャと出会い、生きる喜びを取り戻します。ナターシャはロストフ家ニコライの妹。無邪気で天真爛漫な少女です。

アンドレイはペテルブルグに戻り、軍規制定委員会と法律制定委員会に参加。

ピエールは、クラーギン家の娘、エレンと結婚。エレンは絶世の美女で社交界に君臨。二人の結婚はうまくいかず、エレンは華やかな生活を続け、後に薬で死んでしまいます。

アンドレイはナターシャと婚約するも、老公爵に反対されます。

結婚は1年後となり、2人は離れて暮らしますが、やがてナターシャはエレンの兄アナトーリに気が向き、誘惑され、駆け落ちを図りるのですが、失敗に終わります。

ナターシャは、このことをきっかけに精神的に落ち込みます。

ボロジノ会戦でアナトーリは死亡。

負傷し瀕死のアンドレイと家を離れることとなったナターシャは、再会するも、アンドレイは死亡。ナターシャは、以前と変わり、暗く塞ぎ込んでしまいます。

一方、ピエールは捕虜生活の中で、生きる真理を見出し始めていきます。

マリアは、ニコライに助けられ、領地を離れ、やがて二人は結婚し、ピエールはナターシャに求婚し、結ばれます。

ラストのエピローグでは、トルストイの戦争などに関する総括で締めくくられています。

戦争と平和を読んだ感想・レビュー

戦争と平和

「戦争と平和」は面白くない?読んでみた感想

ネットで検索すると「戦争と平和 面白くない」「戦争と平和 つまらない」などというキーワードもありました。

しかし、僕は「戦争と平和」を、《読んでおくべき小説》だと思いました。

なぜかというと、

「戦争と平和」は、ナポレオン戦争によって、人々がそれまで当たり前に思っていた生活や主義思想、恋愛観などが一変し、それぞれが真実や真理に到達していく様が描かれているからです。

貴族の立場からは、死を身近に感じながら人を愛することや生きる意味などが描かれ、

軍隊の側からは、戦いで勝利をおさめるには、目先の情報にとらわれることなく、背後にある運動法則を見極める俯瞰力が重要であると説いています。

つまり、「戦争と平和」から、物事の本質を見極める目を養うことができると思えたのです。

ビジネス書を読みより、「戦争と平和」を読んだ方が、役に立つんじゃないでしょうか。

「戦争と平和」は《対極》の物語

「戦争と平和」では、全編を通じて、表と裏、光と影といった対極的な物の見方、考え方が根底にあると思います。

そもそもタイトルが、「戦争と平和」ですからね。

登場人物では、アンドレイとピエールは、トルストイの分身であり、アンドレイを現実派、ピエールを理想派として描くことで自身の内部にある二面性を形象化していると解説でも指摘しています。

また、美貌で放蕩な社交界に生きるエレンに対し、屋敷にこもった暮らしを送る決して美しくはないが、信心深いマリアの正反対な生き方とその最後の対比も印象的だったりします。

「戦争と平和」は、偽善と善、豪奢と簡素、利己心と愛といったテーマ的な内容が盛り込まれたストーリーになっています。

僕自身、物事の一方だけを見るのではなく、その裏側や反対側にあるものにも目を向けなくてはいけないなと感じました。

「戦争と平和」の魅力とは?

「戦争と平和」は名文、名言の宝庫!

僕は本を読みながら気に入った部分にペンで線を引き、そのページの端を折ることがあります。

「戦争と平和」には、名言や名文が多く、そんな箇所がたくさんあります。

たとえば、

アンドレイとマリアの父、ボルコンスキイ公爵の持論である、
「人間の悪の根源は、2つしかない。怠惰と迷信だ、また美徳も2つしかない、活動と知力だ」

は、まさにその通りと強く納得しました。

このボルコンスキイ公爵は、かなり偏屈な人間なんですが、こういう考えに行き着いた理由なども読み進めていくとわかる気がしたりします。

他にも教訓めいたような文章があります。

感じ方は、人それぞれですから、自分がなるほどと思えた部分は、チェックしておくといいですよ。

「戦争と平和」の訳者・文庫のおすすめは?

「戦争と平和」は、日本では複数の出版社、翻訳者によって発表されています。

海外小説の翻訳ものは、訳者によって言い回しや言葉の選び方などが違ったりしますよね。

僕は、新潮文庫の工藤精一郎訳の「戦争と平和」を読みました。

他の翻訳者のものは、読んではいませんが、個人的には工藤精一郎訳は、読みやすかったと思います。

字も大きいので老眼の僕でも読みやすかったです。(汗)

とはいえ、翻訳ものにありがちな、普通の日本語で、そんな言い回ししないだろうとツッコミたくなる箇所はありますが、理解はできましたよ。

ただ、どの訳者、出版社の「戦争と平和」が読みやすくおすすめなのかは、読み手との相性もあるので、中々、ひとつには絞り込めないと思います。

そこで、「戦争と平和」の本を出版している主な出版社と翻訳者が、どれくらいあるのか、調べてみました。

「戦争と平和」の翻訳者・出版社一覧

藤沼貴訳(岩波文庫 全6巻、2006年)、ワイド版2014年
望月哲男訳(光文社古典新訳文庫 全6巻、2020年1月 – 2021年9月)
工藤精一郎訳(新潮文庫 全4巻、改版2005-2006年)
北御門二郎訳(東海大学出版会 全3巻)

 

下記は旧訳版(絶版)
米川正夫訳(旧岩波文庫版、全8巻、改版全4巻)
中村白葉訳(「世界文学全集」第13・14巻/「全集」第3・4・5巻、各 河出書房新社)
中村融訳(筑摩書房「選集」第3・4・5巻 ほか)
原久一郎訳(中央公論社、全10巻、1946-1947年)、のち旧新潮文庫
原卓也訳(中央公論社「新集 世界の文学」第17・18・19巻、1968年 ほか)
小沼文彦訳(縮訳版 旺文社文庫 上下、1968年)

(引用元:ウィキペディア)

「戦争と平和」の本を安く買うなら?

戦争と平和

僕は「戦争と平和」の中古本をブックオフで買いました。

定価で購入すれば、4巻で3,660円(税抜き)ですが、ブックオフなど中古なら、半額くらいで買えます。

ただ、中古で購入する場合、4巻全部揃っていないことがあります。

僕はたまたまブックオフに行ったときに4巻揃っていたので、ラッキーでしたが、そうじゃないことが多いです。

なので、KINDLEなどの電子書籍か「戦争と平和」全巻セットの中古本で購入すると定価で全巻購入するより、安く入手できますよ。

まとめ

「戦争と平和」は、文庫なら全4巻あり、読むのに時間もかかるだろうし、登場人物も多いので読破するのは、ハードルが高いと思っていました。

そもそも僕は本を読むのが遅いほうなので。

けど、いったん読み始めると意外とさくさく読めました。

トルストイの文章は表現方法も美しいし、人物描写の中には「胴が長い」女性や「上唇がめくれ上がっている」といった箇所もあり、映像的で記憶に残りやすいと思いました。

それにストーリーが、軍隊、貴族社会という2軸あり、その中に愛情や妬み、出会いや別れ、死などなどの人間関係があったりと飽きさせない内容になっています。

今回、トルストイの「戦争と平和」を読んで、一度は読んでおくべき小説でないか思いました。

すっかりトルストイの魅力に惹かれた僕ですが、今度はトルストイの「アンナ・カレーニナ」にも挑戦したいと思っていますよ。